目の前で曲が完成する瞬間を共有する コライトが見せる音楽制作の新たなエンタメ
日本音楽著作権協会(JASRAC)が運営する音楽クリエイター向けDXプラットフォーム=KENDRIXが主催し、“INSPIRE(刺激)/LEARN(学び)/NETWORK(交流)”をテーマに掲げる無料イベントKENDRIX EXPERIENCEが、3月29日(火)渋谷ストリームホールにて開催される。参加者は最先端の音楽制作や権利管理について学べるだけでなく、トップクリエイター同士のライブコライトを間近で体験できるのも大きな魅力だ。
今回、そのステージでライブコライトを披露するのは、幅広いアーティストへの楽曲提供で知られる音楽プロデューサー/ベーシストのRyo’LEFTY’Miyataと、国内外で数多くのヒットを生み出してきた音楽プロデューサー/作詞作曲家の岡嶋かな多。当日のリアルな創作過程にはどんな刺激とドラマが待っているのか。LEFTYの運営するスタジオ=REVEL MUSICで行われた二人の対談から探ってみよう。
──今回、お二人のライブコライトが実現することになったいきさつを教えてください。
LEFTY 昨年のKENDRIX EXPERIENCEでライブコライトをやったんですが、今年も「また何かやってほしい」とオファーをいただきました。その際「誰と一緒にやりたいですか?」と聞かれて、いちばんに思い浮かんだのが岡嶋かな多さんだったんです。彼女はコライトに関する話題をいろんなメディアで発信されていますし、絶対に適任だと思ってお誘いしました。
──それまで、直接の面識はなかったのでしょうか?
LEFTY コロナ禍の3〜4年前にうちのスタジオで鍋パーティーをしたとき、かな多さんが来てくださって少しお話ししたのが初対面ですね。その後、天月君(天月-あまつき-)の楽曲「Caffe Latte」で僕が作曲を担当し、かな多さんが作詞をしてくれたことはありましたが、スタジオでがっつりコライトをする機会はありませんでした。
岡嶋 伊藤千晃さんのプロジェクトを遠隔でご一緒するなど間接的な関わりはありましたが、対面で作業するのは初めてですね。ずっとタイミングを逃していた感じです。
LEFTY 実は以前から一方的にかな多さんを意識していて、彼女がスウェーデンで活動していた時期があったと聞いて「日本人で海外に拠点を置く作家さんがいるんだ」とずっと気になっていました。そんな経緯もあって、今回思い切って声をかけた感じです。
──今回のライブコライトにおける意気込みやプレッシャーなどはありますか?
LEFTY 僕はノープランで臨むのが基本なんです。スタジオワークも実際、やってみないと分からないことだらけなので。人前で作るとなるとそれなりの緊張感はありますが、逆にそれがプラスに作用することもあります。「観られているからこそ頑張れる」という面も大きいんです。場所や状況が変わると作品内容も変わると思うので、そのライブ感を楽しんでいきたいと思います。
──昨年のライブコライト動画を拝見したところ、制限時間がかなりシビアな印象でした。
LEFTY テレビ番組の“○○○選手権”みたいな気分でやってます(笑)。かな多さんも30分でメロディと歌詞を仕上げるイベントに出たことがあるとか。
岡嶋 はい。30分はさすがに短すぎてバタバタですけど、逆に“鍛冶場の馬鹿力”が出たりするから、エンタメとしては面白いですよね。逆に2時間あれば沈黙も増えますし。今回はゼロからトラックを作ると伺っているので、どんな流れになるか私も楽しみです。
──スタジオと違い、観客が見ている中でのコライトという状況についてはいかがですか?
LEFTY エンターテイナーとして「沈黙はまずい」と意識してしまうこともあり、音楽プロデューサー脳を含めた“2つの脳みそ”を使ってるような感覚です。でもプラス面もあって、観客から得られるの刺激というのも大きいですね。
岡嶋 私はそこまで肝が据わってなくて、正直すごく緊張します(笑)。でもLEFTY君と以前「コライト自体がエンタメになるよね」という話をしたことがあって、制作過程をそのまま見せるのは面白いんじゃないかと。今回のライブコライトはその実験としても楽しみです。
Ryo’LEFTY’Miyataは、日本の音楽プロデューサー/作編曲家/ベーシスト/ギタリスト/キーボーディスト/マニピュレーターとして幅広く活躍するアーティスト。Superfly、BE:FIRST、MISIA、sumika、eillなど多くのアーティストへ楽曲提供やプロデュース、編曲を手掛ける。ユーティリティープレイヤーとして、Official髭男dismなど演出も含めたライブプロデュース能力も高く評価されている。2022年、若手アーティストの活動を支援するためOIKOS MUSIC株式会社を共同創業。2024年、アーティスト集団「cross-dominance」を発足。現在はJFN系列全国ラジオ番組「cross-dominance MUSIC TOURIST」のMCも務める
──昨年は観客の反応をリアルに取り入れていましたよね。
LEFTY そうですね。「AとB、どっちがいい?」とその場で聞いてしまうとか。海外だとスタジオのスタッフさんまでコライトのクレジットに入っていたりするケースもありますが、要するに“そこにいる全員で曲を作る”感覚が面白いんです。ギャングコーラスを入れたければ、観客に「今から“オイ!”と言ってください」とお願いすることもできる(笑)。
岡嶋 私も最初は「作りかけを見せるなんて」と抵抗があったんですが、取材に来た方が「そこが一番面白い」と言ってくださってから意識が変わりました。確かに結果だけじゃなく、過程にこそドラマがあるんですよね。
──当日のコライトで注目してほしいポイントは?
LEFTY 僕が個人的に楽しみにしているのは「かな多さんの仮歌」ですね。最終的に別の方が歌う場合も、デモ段階で作家本人が歌うことは多いのに、普通はそれをリスナーは聴けない。今回は「こんな仮歌から始まったんだ」というリアルな制作過程を見てもらえるのが魅力かなと。
岡嶋 まさかそこを注目されるとは(笑)。あとは「その日の朝には存在しなかった曲が、イベント終了時には完成している」ことの凄さを感じてほしいです。チームの雰囲気が良くても意外と普通の曲で終わったり、ギクシャクしていたのに傑作が生まれたりするのがコライトの面白さ。そこをライブで体感してもらえたらうれしいですね。
──来場者へのメッセージをお願いします。
LEFTY コライトのいいところは、世界で最初のリスナーになれるだけでなく、制作の“共犯者”になれる点だと思います。そうやって生まれた曲をあとから聴くと、「あのとき自分も意見したな」なんて思い出すので、そこに大きな価値がある。
岡嶋 私は「曲作りは恋愛の成就に似ている」と思っていて、形になるまでの過程自体もドラマチックだと感じます。そのプロセスを見てもらう機会はそう多くないので、今回のライブコライトで「音楽って面白い」「コライトってこんなに可能性があるんだ」と思ってもらえたら嬉しいです。音楽に限らず、みんなで何かを作り上げること自体、尊い行為だと思いますしね。
──コライトをするうえで大事にしているマインドやルールはありますか?
岡嶋 昔は「自分のアイデアを早く出してアピールしなくちゃ」と思っていましたが、今はむしろ周りの意見をしっかりヒアリングして、「それならこういうアプローチはどう?」と提案するようにしています。時にはクッション役になることで、全体をスムーズに回すようなポジションも意識しますね。
LEFTY 助かる存在ですよね。僕はサッカーにたとえて、空いているポジションを見て「いないなら自分が守備やろう」「フォワードが必要なら自分が」みたいな動き方をします。必要に応じて役割を切り替えるけど、ここぞというときにはしっかり主張する。それくらいのバランス感覚が大事だと思います。
──普段お二人がコライトされる際の人数は、どれぐらいが多いですか?
LEFTY 2人から3人がいちばんやりやすいと思います。大人数になるとまとめるのが大変で。
岡嶋 セッションによっては人数が多い場合もありますが、確かに2〜3人が適度ですよね。
──海外でのコライトでは、国柄によっても進め方が違うようですね。
LEFTY 一概に「この国はこうだ」と断定はできませんが、スウェーデンは日本人と似て協調性がある印象です。一方、ロンドンに行ったときはトップライナーが寡黙すぎて「盛り上がってないのかな?」と思ったら、後で「すごく面白かったからまたやりたい」と言われたり(笑)。
岡嶋 スウェーデンはコード先行で組み立てるスタイルが多くて、イギリスはダンスやロック文化が強いからループやリフ主体だったり。去年からチャレンジしている南米は人数やスピード感がすごいんですが、そのぶんアティチュードやフレージングを重視していて、日本のメロディを楽しんでくれたりもします。
──コライトのスタートはどのように始まるのですか?
LEFTY 僕は“スクラッチスタート”(“完全に白紙の状態”から作りはじめること)が好きで、みんなに「なんかある?」とアイデアを探りながら作ります。リファレンスに縛られず自然に進めたいんです。
岡嶋 私もプロジェクト次第で変えますが、海外はほぼスクラッチですね。タイトルだけ先に決める場合もあって、クラブ系だとそれで曲の方向が決まることも多いです。
──KENDRIX EXPERIENCEは「学び」「刺激」「交流」をテーマに掲げていますが、これについてどう感じていらっしゃいますか?
LEFTY 僕自身、長く音楽をやってきましたが、これから挑戦したい若手クリエイターのために何か役立ちたい気持ちがあって。海外に打って出るノウハウも共有できたらいいですよね。
岡嶋 私もまだまだ学びは尽きないと思っていて、コライトも正解がないからこそ楽しい。それを見て若いクリエイターが刺激を受けたり、学びを得たりしたら最高ですね。
──KENDRIXプラットフォームには、ブロックチェーン技術とeKYC(オンライン身元確認)を活用した楽曲管理や権利保護の機能があります。
LEFTY 海外では曲ができた直後にスプリットシートで権利をきちんと決めるのが普通ですが、日本は後回しになりがち。KENDRIXをきっかけに、「楽曲は大事な財産だ」と意識する人が増えればいいですね。
岡嶋 作ることばかりに目が行きがちですが、自分の作品を守る仕組みも重要です。私も勉強していきたいので、みんなで意識を高められたらと思います。
──本日はありがとうございました。3月29日のライブコライトを楽しみにしています!
KENDRIX EXPERIENCE 開催概要
- 日時:2025年3月29日(土) 13時30分開場、14時〜21時(予定)
- 開場:渋谷ストリーム ホール(東京都渋谷区渋谷3-21-3)
- 参加費:無料
- 参加方法:特設サイト内の応募フォームから申込み。抽選結果は3月8日以降当選者に連絡
- 応募締切:2025年3月7日(金)23時59分
KENDRIX EXPERIENCE特設サイト
関連リンク
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