Avid Pro Tools 2025.6 〜Splice統合や文字起こし機能が追加されMIDIやARAも強化

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 Avidから、DAWソフトPro Toolsの最新版Pro Tools 2025.6がリリースされた。Spliceの統合や、会話音声や歌詞の情報を素早く検索可能なAIを活用したSpeech-to-Text分析など、音楽制作/ポストプロダクションの両ユーザーに向けた多くの機能が追加されている。

 Pro Tools 2025.6は、有効なサブスクリプション、あるいは永続版ライセンスで有効な「ソフトウェア・アップデート+サポートプラン」を持つすべてのPro Toolsユーザーに提供される。

Pro Tools上Spliceのサウンドにアクセス可能

Pro ToolsのSpliceウィンドウ。中央の「Search with Sound」にオーディオクリップをドラッグ&ドロップすると、Spliceから条件にかなうサンプルをAIが探し出してくれる

Pro ToolsのSpliceウィンドウ。中央の「Search with Sound」にオーディオクリップをドラッグ&ドロップすると、Spliceから条件にかなうサンプルをAIが探し出してくれる

 Spliceの提供するサンプル・ライブラリーがPro Toolsと統合され、Pro Tools上からアクセスできるだけでなく、Pro Tools上のオーディオクリップをドラッグするだけで、Splice AIがセッションのビート、キー、テンポに同期した最適なサンプルを探し出してもくれる。Pro Toolsのユーザーは、無料のSpliceアカウントを作成して2,500以上の無料サンプルを入手可能。月額12.99ドルのサブスクリプションでSpliceの全ライブラリにアクセスすることも可能となっている。

音声テキスト変換による「トランスクリプション」と編集

トランスクリプション機能を使って、音声の内容を波形と並べて文字で表示できる

トランスクリプション機能を使って、音声の内容を波形と並べて文字で表示できる

 「トランスクリプション」機能を使って、音声会話やボーカルの波形から特定の単語を識別することで、特定のオーディオクリップに対応する単語を波形のすぐ隣に表示可能に。特定の単語やフレーズに基づいて選択/編集したり、セッション内のすべてのオーディオファイルをテキストで検索できるようになった。

トランスクリプション・ウィンドウでは文字情報の一覧/検索が可能

トランスクリプション・ウィンドウでは文字情報の一覧/検索が可能

 トランスクリプション・ウィンドウには、セッションの中で文字起こしされたオーディオをタイムラインまたはファイル単位で表示/編集。必要な情報のみを表示するように個別にカスタマイズでき、表示するクリップやファイルを正確に絞りこむためのさまざまなフィルタリング・オプションが用意されている。

ARA強化〜Synthesizer V2とWaves Sync Vxサポート

Synthesizer V 2 ProをARAで使用しているところ

Synthesizer V 2 ProをARAで使用しているところ

 ARAのアップデートで、Dreamtonics Synthesizer V Studio 2 Pro 2.1.0とWaves Sync VxをPro Tools上で使用可能に。ボーカル・トラックをMIDIデータに変換し、Synthesizer Vで別のボーカルを作成したり、Sync Vxで複数のボーカルトラックのタイミングとピッチを合わせたりといった作業が行える。

Non-Lethal Applications Cue ProによるADR機能対応

Pro Tools+Cue Pro

 Pro Tools StudioおよびUltimateのビデオ出力に、ADR作業対応アプリケーションNon-Lethal Applications Cue ProによるADRキューを直接オーバーレイ。追加の設定や個別のプロジェクト管理を行う事なく、外国語吹き替え、フォーリーワークフローをサポートする。Cue Pro Connectプラグインは、すべてのCue ProプロジェクトデータをPro Toolsセッション内に直接シームレスに統合して保存。他のエンジニアや部門への引き継ぎを簡素化できる。

Cargo Cult Matchbox 2.0との連携強化

Pro Tools+Matchbox 2.0

 Cargo Cult Matchbox 2.0とPro Tools StudioおよびUltimate、Media Composer、その他のノンリニア・エディター間でのリコンフォーミング・プロセスがより迅速で信頼性の高いものとなった。新しいスマート・コンフォーム・オートメーションは、クリップごとにリコンフォームを実行。Matchboxは元の映像と新しい映像を常に並べて比較し、変更箇所を赤でハイライト表示する。また、古いカットと新しいカットの間を簡単に切り替えて参照でき、新しいカットと完全に同期してイベント全体をコピー/ペーストすることも可能だ。

MIDIの改善点

トラック左の「MIDI操作」でクオンタイズなどもスピーディに

Pro Tools MIDI操作タブ

 MIDIエディタ左の「トラック」タブの横に、「MIDI操作」タブが新たに追加。クオンタイズなどのMIDI操作コマンドにスムーズにアクセスできる。

キースイッチやドラムに便利な「ノートラベル」

Pro Tools ノートラベル

 各インストゥルメントやMIDIトラックのMIDIエディタ・キーボードで、カスタムラベルがサポート。ドラムのプログラミングやキースイッチなどで、任意の情報を表示できるようになった。設定したラベルは、トラックとともに保存されるため、ラベルを保持したままトラックビューを切り替えることが可能。「ノートラベル」ビューではカスタムラベルが設定されたノートのみを表示することもできる。

MIDI入力モニタリング&デフォルトスルーで「いつでも鍵盤で音チェック」

Pro Tools MIDI デフォルトスルー

 インストゥルメント・トラックの入力モニタリングが復活。任意のMIDI/インストゥルメント・トラックをデフォルトスルー・トラックとして設定することで、MIDI/インストゥルメントトラックのモニターがオンになっていない場合でも、MIDIキーボードなどから音を鳴らすことができる(複数トラックの設定も可能)。さらに、MIDIトラックの入力モニタリングも加わることになったため、外部のハードウェアシンセもこの用途で使用可能となった。

MIDIライブモードでオーディオとMIDIのタイミングが合致

 新しいグローバル設定として「MIDIライブモード」が用意された。すべてのインストゥルメント・トラックでの演奏は、オーディオの演奏と同じタイミングとして扱われる。同じシグナルチェーン内のオーディオは同様に動作し、録音データは録音されたMIDIと同期するようにシフトされる。

上2つがレガシーモードのMIDIとオーディオ、下2つがライブモードのMIDIとオーディオ

上2つがレガシーモードのMIDIとオーディオ、下2つがライブモードのMIDIとオーディオ

 例えば、従来のレガシーモードだと、MIDI演奏するインストゥルメントトラックの信号を別のオーディオトラックに録音すると、MIDIとオーディオのタイミングにズレが生じていた。MIDIライブモードでは、これを補正してMIDIとオーディオを同じタイミングにそろえてくれる。

ワークフローの改善

プレイリストの改善

 新しいプレイリストを一番上に追加するか、一番下に追加するかの定義ができるようになった。さらに、別のプレイリストを選択するときに、視覚的に表示されるようになった。

Avid Video EngineのAppleシリコン・ネイティブサポート

 Pro Toolsに搭載されているAvid Video Engine(AVE)がAppleシリコン上でネイティブ動作。AVEは、ARMベースとIntelベースのMacの両方をサポートしており、Pro Toolsで有効になっている場合は、Rosettaエミュレーション経由で動作するように切り替わる。

ホストベースのミキサー精度向上でVCA/トリムのオートメーションが正確に

 Pro Tools|HDXのHDXハイブリッドエンジンでは、CPUベースのミキシングパワーとDSPによる低レイテンシーのモニタリングを実現していた。ただし、トリムモードやVCAマスターを使用して既存のボリュームオートメーションを変更する場合などで、遅延の影響を受けることがあった

 Pro Tools 2025.6ではこの問題を解決し、トリムモードやVCA制御グループをリアルタイムで使用する際のオートメーション再生精度を大幅に向上。これは、Pro Tools | HDXハイブリッドエンジンを使用するときだけでなく、Pro Tools | Carbonや一般的なCore Audio / ASIOインターフェースを使用する場合(CPUネイティブ動作)にも適用される。トリムまたはVCAオートメーションの書き込みが開始すると、オートメーションの精度は従来のPro Tools | HDXエンジンと同等となる。

Dolby Atmosエクスポート時の間引き機能でADMファイルをGB単位で縮小

 Dolby AtmosのADMファイルを書き出す際、クリップ間の不要なオートメーションのブレークポイントを削除することで、ADMファイルのサイズをGB単位で縮小できるようになった。

「全ミュート解除」の悲劇を防ぐミュートセーフ

Pro Tools Allow All Mute option

  誤ってoption(Mac)/Alt(Win)キーを押しながらミックス途中でミュートボタンをクリックすると、すべてのミュートが解除されるため、それ以前のトラック・ミュート状態に復帰するのが困難だった。Pro Tools 2025.6では、トラックのミュートの右クリックメニューとグローバル・ミュート・インジケーターに、チャンネルの一括ミュート/ミュート解除を防ぐオプションが追加された。


ダッシュボードもリニューアル

Pro Tools ダッシュボード上のコンテクストメニュー

ダッシュボード上のコンテクストメニュー

 起動時に表示されるダッシュボードリニューアル。テンプレートが、フォルダ/リストビューに整理されたほか、画面サイズ変更に対応したため、必要に応じてビューに多くのファイルを配置可能となった。また、ダッシュボード・ウィンドウもキーボードで操作可能になっている。そのほか、「最近開いたドキュメント」に、右クリック/コンテキストメニューが追加され、OS上でのファイル表示などもここから可能となっている。

 

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