和泉宏隆(T-SQUARE)追悼 〜バンドとしての方向性を定めることができた功労者の人柄を偲ぶ

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4月26日、THE SQUARE〜T-SQUAREのキーボード奏者(1982~98年在籍)として、長年に渡り作曲やアレンジでバンドに多大なる貢献をしてきた和泉宏隆が亡くなった。享年62歳。今回、ギター・マガジンWEBに寄稿したT-SQUAREのギタリスト=安藤正容へのインタビュー記事(近日公開予定)にも再三登場するように、スクエアがバンドとしての方向性を定めることが出来たのは彼の存在無しには考えられない。彼の音楽に関する賛辞は、共演歴のあるミュージシャンをはじめ関係者の方々がSNSなどに書き込んでおられるが、ここではライターの一人としての接点を懐かしんでみたい。

素晴らしいことは、する(Doing)のではなく
おきる(Happening)もの

 最初のインタビューは十数年前、和泉さんがピアノ・トリオでDVDを発表したときだった。場所はお天気のいい昼間、今は無き六本木スイート・ベイジルのテラスだった。同じ1958年生まれということもあり、お互い気さくに話ははずんだ。当時の僕は朝起きたときに和泉さんのソロ・ピアノのCDを聴くのが好きで、そのことを伝えるととても喜んでいた。

 

 それ以来、たまに連絡を取り合うようになったのだが、まだSNSなど無かった時代なので手段は携帯のメールや電話。夜遅い時間に和泉さんからよく電話が掛かってきたのは困ったものだったが、ライブのお知らせやご招待はありがたく頂戴した。レコーディングの進捗状況など、貴重なネタも聞かせてもらった。スクエア時代に弾いていたシンセサイザーについての話も興味深いものだった。

 

 そして2010年9月12日、僕がブルースアレイ・ジャパンで『第1回ジェフ・ベック・ナイト』を主催したときのこと。大槻啓之、是方博邦、和田アキラという3人のギタリストのゲスト出演が決まり、ご招待したところ和泉さんも出演したいとのこと。そこで突然の飛び入りという設定にした。客席で飲んでいた和泉さんを突然ステージに呼び込むという演出。もちろん、リハーサルなどしていないし、出演者としても発表していなかったので、お客さんにとっては全くのサプライズだ。そして和泉さんが何気なく弾き始めた曲は「哀しみの恋人達」。ジェフ・ベック関連のキーボード奏者ではマックス・ミドルトンが好きという和泉さんらしい選曲だ。とても美しい演奏だったことは言うまでもない。

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和泉さんが飛び入り参加した『第1回ジェフ・ベック・ナイト』のフライヤー

 その後、T-SQUAREやTHE SQUAREのリユニオンも何度かあり、インタビューなどでお話しすることは多かった。しかし夜中に酔っ払って掛かってくる電話が、たいてい仕事上の悩みや不安というのも、今思うと妙な話だった。あんな自信に満ちた演奏をする人なのに、実はとても繊細な人だったのだろう。僕が過去に行ったインタビューの原稿を探してみると、そんな和泉さんの音楽に対する姿勢/精神、人柄をよく表している一節があった。

 

 「ピアノを歌わせたいという思いはTHE SQUARE時代から持ち続けていました。その努力が少しでも功を奏して、お褒めの言葉をいただけるようになったのは嬉しいことです。すぐに結果をだせるような簡単なことではありませんが、自分自身少しずつ前に進んでいるという手応えはあります。元来、我々人間はスピリチュアルな存在ですから、インストゥルメンタルという形態には演奏者の精神性が大きく表われるはずです。だから僕にとって演奏行為とは言葉のない世界に入って自分自身を見つめることだと考えています。理想とする境地は“忘我”というか“トランス”というか、そこには残念ながら私はいない…。気がつけば、そこには曲があった…そんな感じです。素晴らしいことは、する(Doing)のではなく、おきる(Happening)ものなのです」

 

 そして何の前触れもなく届いた突然の訃報。あの才能とセンスを思えば、この早過ぎる死は残念でならない。謹んでご冥福をお祈りいたします。

 

和泉宏隆
【Profile】1958年東京生まれ。4歳よりピアノを始め、高校時代にジャズ・ピアニストを志す。82年、THE SQUAREに加入し98年にT-SQUAREを退団するまでメロディアスなキーボード・プレイと数々の名曲をバンドに提供。ソロ作品としては88年に初リーダー作「Amoshe」を発表し、T-SQUARE退団後はソロ・ピアノ・アルバムを中心にリリースしている。05年には鳥山雄司、神保彰とPYRAMIDを結成。さらに06年より村上聖、板垣正美とトリオを組む。その他、T SQUARE、T-SQUAREのリユニオン・ライヴやレコーディングにも参加している。

 

バックナンバーで振り返るサンレコとTHE SQUARE

 THE SQUAREとして初めて『サウンド&レコーディング・マガジン』に登場したのは1983年6月号。以降、サンレコ創成期を支えていただいたバンドの一つとして度々インタビューに応じてくれましたが、ここではサンレコ・バックナンバーから抜粋した記事をいくつかご紹介します。Web会員の方はバックナンバー・ページからご覧いただけます。

 

1983年6月号|Recording Report ザ・スクエア&松田 弘

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1984年4月号|表紙&Focus of This Month ザ・スクェア

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1985年5月号|THE SESSION ザ・スクェア

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1986年4月号|ザ・スクェア インタビュー

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